男ともだち

男ともだち (文春文庫) 作者:千早 茜 文藝春秋 Amazon 知らぬ間にほとんど自傷行為みたいな本を選んでいた、わざとではない。読んでるうちに自分の記憶が呼び覚まされて泣く、ということを繰り返して読み切ったので、"読んだことある状態"になっているかわか…

風雨

風雨に晒されたあと、やがて水分が失われて地面がひび割れるみたいに、植物の組織がスカスカの空洞になるみたいに、人間が脆くなっていく もう腕も上がらないだろう 気を紛らわせるのにだって動機が必要で、理由が何もないのに手を動かそうとすると、ひどく…

祐介•字慰

祐介・字慰 (文春文庫) 作者:尾崎 世界観 文藝春秋 Amazon 装丁が寄藤文平で、私は『死にカタログ』が好きだったので嬉しかった。元はといえば千早茜の作品に尾崎世界観が解説を書いていたので、この人の作品も読もうと思って手に取ったのだけど、別ルートの…

緑衣の美少年

前作を読んだとき、続編も続きで買えと書いたのだけど、別にこれを読んでも特に何かが解決したりはしなかった、むしろ状況は深刻になり、物語は佳境に差し掛かっている。 緑衣の美少年 (講談社タイガ) 作者:西尾維新 講談社 Amazon この作品内のクライマック…

不良少年とキリスト

不良少年とキリスト (新潮文庫) 作者:坂口 安吾 新潮社 Amazon 評論集。九つ目次があって、織田作之助と太宰治が亡くなった時にそれぞれ書いたものが含まれている。全ての作品が戦後すぐ、1946年〜1948年が初出だ。 座談会が2つ収められているのだけど、出て…

男らしさの終焉

男らしさの終焉 作者:グレイソン・ペリー フィルムアート社 Amazon ソフトカバー好き。この本がピンクと水色の装丁なのはいいな。 著者のグレイソン•ペリーはイギリスの著名なアーティストらしかったので、さっき画像検索してみたのだけど私は作品を生で見た…

笹の舟で海をわたる

笹の舟で海をわたる (新潮文庫) 作者:光代, 角田 新潮社 Amazon 主人公・左織は私の祖母と同世代(昭和ヒトケタ後半〜10年代前半生まれ?)だった。私は彼女の孫と同世代だ。 左織は、疎開先が同じだった風美子と、二十二歳で再会する。風美子が、左織の夫と…

アレックスと私

アレックスと私 (ハヤカワ文庫NF) 作者:アイリーン M ペパーバーグ 早川書房 Amazon カバーイラストをカシワイさんが描いていた。時々Twitterでイラストを目にしていて、紙に印刷されているのは初めて認識した。かわいいヨウム"アレックス"と、"私"用であろ…

袋小路の男

袋小路の男 (講談社文庫) 作者:絲山秋子 講談社 Amazon 単行本は2004年の出版だった。3つの作品が収められている。 「袋小路の男」 表題作。女が高校の先輩に片思いをし続ける話。男は女を恋人にはせず、かといってたいして遠ざけもせずに12年過ごすし、この…

動きすぎてはいけない

動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学 (河出文庫) 作者:千葉雅也 河出書房新社 Amazon 動きすぎるとウイルスの運び屋扱いで他人に叱られるような状況の中、ここ最近はこれを読んでいた。 著者はTwitterアカウントを持っていて、わりと長い…

視点を変えない

時々友人の愚痴や悩みの吐露を聞くことがあって、本人が楽になればという老婆心で、"でもこういう人もいるし" 、"私なんかはこうだし" 、と相手の状況とそれに対する評価を相対化する発言をするときがある。相手が誰かに話したいと思って人となりを知る私を…

赤木遥+安田和弘「花たちへ/花を踏む」

この記事を公開する頃には終わっている展示の話を、今書いておく。 Instagramで最初の告知が視界に入ったとき、コレ私の住む街に巡回してくれる予定ないかな、と考えて安田さんに言ってみたら、ないですとのことで、現実は厳しいなと思っていた。数日後、赤…

美少年椅子

美少年椅子 (講談社タイガ) 作者:西尾 維新,キナコ 発売日: 2017/10/19 メディア: 文庫 5冊に1回くらいのペースで西尾維新挟むの、作家の多作なくしては成り立たない息抜きシステムなのだけど、私が西尾維新を読むようになってからというもの彼の刊行ペース…

まぐだら屋のマリア

まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫) 作者:原田 マハ 発売日: 2014/02/06 メディア: 文庫 母が読み終わったあと私にパスしたのを読み終えた。わりと癇が強くなってる状態で終始泣きを入れながら読んだ。 以下ネタバレします 主人公の紫紋は勤務先の料亭の食品偽…

ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師

ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師 (電撃文庫) 作者:上遠野 浩平 発売日: 2015/01/10 メディア: Kindle版 このシリーズの最初の作品、「ブギーポップは笑わない」を読もうとしたら新装版が出ている関係か電撃文庫版を置いてる書店がさすがにな…

レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット

レイシズムを解剖する 作者:高史明 発売日: 2020/04/13 メディア: Kindle版 紙で読んだけどリンクのデフォルトはKindleみたい。公刊当時に著者がTwitterで宣伝しているのを読んでいて、読みたいなと思いながら6年近く寝かせてしまった。 本書は主にはTwitte…

赤ワインかメイカーズなら

もっと飲めるよ、と友人がいう夢を見た。 そんな時間でも場所でもなくて、酔っ払いのやなところをわかってる夢だなと思ったのだけど、現実にはそんなぐにゃぐにゃの状態のそのひとと一緒に過ごすことは、しばらくないだろうと思う。

江戸川乱歩名作選

江戸川乱歩名作選 (新潮文庫) 作者:乱歩, 江戸川 発売日: 2016/06/26 メディア: 文庫 著作権保護が切れたあとに編まれた選集なのだけど、うち3遍は乱歩が生前に半ば自薦した選集と同じラインナップなのだそうだ。 「押絵と旅する男」や「目羅博士」なんかを…

ガーデン

ガーデン (文春文庫) 作者:千早 茜 発売日: 2020/08/05 メディア: Kindle版 近所にある、取置きの雑誌と漫画・文庫・新書の新刊で棚がほぼ埋まっているような本屋で買った。タイトルと書き出しで私を傷つけない内容だと確信できたので。 ※以下作品の内容に触…

D坂の美少年

D坂の美少年 (講談社タイガ) 作者:西尾維新 発売日: 2017/03/22 メディア: Kindle版 恒例の西尾維新。 読んでいていつも思うのは結局これを熱狂的に読んだらそれなりの教養が身についてしまうということだ。タイトルのオマージュ元をたどり、役不足の誤用に…

長いお別れ

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1)) 作者:レイモンド・チャンドラー 発売日: 1976/04/01 メディア: 文庫 2014年に日本でドラマ化されたものを何回分か見て、アイリーン役の小雪が美しく、大友良英が手がけた音楽が素晴らしかったのが印象に残って…

承認

承認が息してないときにね、ほかの何かで紛らわすのがもう本当に嫌になっちゃった。楽しみな予定を作ったり、新しい誰かと仲良くなったり、人間と関わることをすると総じて気分が良くなるのは知ってて、ちゃんとトライアンドエラーを重ねたら相性のよい場所…

あなたならどうする

あなたならどうする (文春文庫) 作者:荒野, 井上 発売日: 2020/07/08 メディア: 文庫 井上荒野を読んでいた。初出が2011年から2016年の短編が9編収められている。 オレンジ色の花の帯が、梅雨の合間のぼんやりした晴天に滲んでいて、そこで作業している人の…

北北西に曇と往け1・2

北北西に曇と往け 1巻 (HARTA COMIX) 作者:入江 亜季 発売日: 2017/10/13 メディア: Kindle版 北北西に曇と往け 2巻 (HARTA COMIX) 作者:入江 亜季 発売日: 2018/03/15 メディア: Kindle版 まだ2巻までしか読んでいない。アイスランドの自然をバックに、17…

停電の夜に

停電の夜に (新潮文庫) 作者:ジュンパ ラヒリ 発売日: 2003/02/28 メディア: 文庫 ジュンパ・ラヒリのデビュー短編集を読んでいた。 「三度目で最後の大陸」というタイトルの作品が一番最後に収められている。インド出身で学生時代をイギリスで過ごした男性…

感受性

水やりしなければ死ぬと思うじゃん、どんなに干からびさせても結局同根だとどこからか必要最低限の水分を調達してきて生き延びるからね、意味ない。茨木のり子先生助けて。 この10年くらい、そういう瑞々しい感受性的な、過敏な心性をコントロールすることに…

ミセス・マーメイド3

ミセス・マーメイド 3 (花とゆめCOMICS) 作者:高尾 滋 発売日: 2020/07/20 メディア: コミック 今時このマンガの主人公に心から感情移入して泣いてる人あまりいないかもしれないけど私はそういう人だ。そしておそらく海果が海に還らないであろうことを今から…

使い切り

神にも仏にも同じことを聞き続けて、そんなことをやっている間に信じたいものは減っていって、だから神や仏が必要なんだと思う。 前の前に付き合っていたひとが、人間は段々削れていって、その帰結として死ぬと言っていて、本当にそれだけだろうかとその時は…

踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ

はじめての佐々木中 踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ 作者:佐々木 中 発売日: 2013/08/08 メディア: 単行本 佐々木中読みたいんだった〜と思い出した時に装丁と発行年で選んだのだけど、幸いにして読みやすかった。講演の記録と、対談が主で、論…

もういくつ寝ると

今まで、友人に恋人ができれば長く続きますようにと思っていたし、結婚するとなれば祝福する気持ちを持っていた。それは他者に対してであれば今も変わらない。みんな幸せでいて欲しい。 でも気がついたらカップルという関係性の排他性のために、私が手放さざ…