男ともだち

 

 

知らぬ間にほとんど自傷行為みたいな本を選んでいた、わざとではない。読んでるうちに自分の記憶が呼び覚まされて泣く、ということを繰り返して読み切ったので、"読んだことある状態"になっているかわからない。

主人公・神名は物語が始まる時29歳、京都に住む、美大出ではないイラストレーターで、学生時代仲の良かったサークルの先輩ハセオと、7年ぶりの再会を果たす。

神名の色恋に関する感覚は道徳からは外れているけど、私にとってはこっちでいいならこっちがいいよなと思うようなもので、私のなけなしの良心がはらむ欺瞞みたいなものを見透かされているように感じた。

かつてあんちゃんを失ったのに美穂みたいには器用でないので、読んでいる間ずっと苦しかったな。

千早茜の本、買うのに躊躇わないのだけど、冒頭に作者の気合が感じられるからだと思う。いつも最初の一行に吸い寄せられて買っている。