使い切り

神にも仏にも同じことを聞き続けて、そんなことをやっている間に信じたいものは減っていって、だから神や仏が必要なんだと思う。

前の前に付き合っていたひとが、人間は段々削れていって、その帰結として死ぬと言っていて、本当にそれだけだろうかとその時は思っていたのだけど、大体のところはその通りだなと思う。摩耗した分は回復しない。もちろん戻らないなりに残りの分で生きていくしかないというだけのことで、摩耗する分がもともと生きるために無駄だったわけではない。

でもやっぱり驚いてしまう、毎時毎分命が削られていって二度と戻らない、その音や感触がこんなにも五月蝿いのに、たとえば明日のことを考えるひとの方が多いなんて。私は血管の中を血液がごうごうと流れてゆく、歩くたびにくるぶしの骨が軋む、その音に耳を澄ませているだけで十分忙しい。