メインテーマは殺人

 

 

 以前3作目を読んだシリーズの1作目。伏線がかなり丁寧なので途中でなんとなく犯人がわかった。こういう犯人当ても楽しみのひとつだろうミステリ、目星がついたところで立ち止まってきちんと考えればいいんだけど、いつも読むスピードをほとんど緩められないで最後まで読んでしまう。

 シリーズの最初の作品なのでキャラクターを立ち上げるためにかなり丁寧な登場人物や情景の描写があって、それがとてもよかった。携帯電話はある時代の話なのだけど、バディもので探偵もので舞台がイギリスで、本格推理小説ファンも読めそうだし青い鳥文庫上がりのミステリファン(私)も読める。

 最初に殺されるのはその日の午前中に自身の葬儀の予約をした裕福な老婦人で、警察の顧問であるホーソーンと、彼に自身の本を書くように依頼されたアンソニーホロヴィッツが捜査に乗り出すところから始まるお話。

 ハリウッドスターが出てくるのだけど、ハリウッドでの暮らしはかなり悪し様に言われていて、イギリスっぽくてよかったな。ロンドンとハリウッドって結構遠いように思うけど、言葉は英語だから通じるんだよね。どんな感覚なんだろう。

 語り手兼探偵の相棒役のアンソニーがなにかまずいことを言ったり調子に乗ったりするたびに薄めの共感性羞恥に襲われる。昔から度々思うけどやっぱりこういう探偵モノは相棒のトンチンカンなところを多少は描かないと面白くならないものなんだろうか。でも確かに思い返せばそういう失敗が読者へのヒントになっているところもあって、ミステリを読みたければ耐えるしかないのかもしれない。

 いずれにしてもクラシックな手触りと現代の価値観が並走していてかなり好きなシリーズだなと思うので未読で残っている2冊目やそのあとも読むでしょう。