Wes Anderson & Shohei Otani

急に人名になっちゃった。

午前中は殆ど眠っていた。他人の家には自分の問題がないから落ち着くのだと思う。

前日の夜、予習兼酒の肴にエンジェルスの負け試合を見ていたのだけど、間に挟まるペンキやら4WDやらのCMの中に、ウェスアンダーソンの新作の宣伝も入っていた。「え、これ、先週次の金曜日からって言ってるってことは…?え、え」「もうやってるよ?」「うわー、出る出る言って全然出ないことで有名なあのウェスアンダーソンの新作…アメリカ来てよかったー…明日見にいくわ」つってクソみたいなオンラインチケットシステムを友人の米国内請求先住所に攻略してもらった。

平日昼下がりのAMC Thertreはびっくりするほど空いていて、もぎりのお兄さんが開映直前までいないせいであやうくチケットを切らずに席に行き着くところだった。直前にジェラート屋さんでピスタチオとリモンチェッロジェラートを食べていたから、あんまり考えないでコーヒーだけ頼んだ。恰幅のいい店員さんがコーヒーとは別のカップに砂糖とミルクをたくさん持ってきてくれたのにすげなく断ってしまったら、怪訝な顔をして「OK…just black coffee...」とかなんとかぶつぶつ言っていた、最初からブラックと言えばよかったかな。

映画はAsteroid Cityというタイトルで、奇しくもアメリ中南部の砂漠が舞台だった。明るくて乾いた画面は前作のフレンチ・ディスパッチとは質感が違っていて、登場する何人もの子供たちの無垢さとよくマッチしていたように思う。別に全部英語が聞き取れるわけでもないからちゃんとした感想が言えるかというと微妙なんだけど、しんしんと気に入った会話シーンがあって、それは

 

 

 

 

 

「私とあなたには共通点がある。すごくかなしいことがあって、でもそれを説明しない。」

「「したくないから」」

「そういう共通点がある」

 

という会話(日本で公開されたら詳細を修正するね)を、妻を亡くした主人公の男性と、この町で出会った女優が、違う建物の2階の窓同士でするところ。お互いの領域が窓の向こうに見えているのに立ち入ることがない、その関係性が端的に表現されていたと思う。

 

ねたばれここまで

 

交感はあるが相手を侵さない、そうであることで保たれる距離と緊張。それらによってもたらされる安寧。

帰る途中に韓国系のスーパーがあったので寄った。見たことないくらい沢山の種類のキムチや、ロッテのお菓子、韓国メーカーのインスタントラーメンなんかがあって、面白いから買いたかったのだけど、アメリカ土産としては意味がわからないか、と思って見るだけにした。おおざっぱにアジア系スーパーでもあるので日本やベトナムのメーカーの食品も置かれていた。

家に一度戻ってアナハイムのエンジェルススタジアムに出発した。なんとなしウキウキした渋滞を抜けて、入り口で大谷パズル(100ピースある!)をもらって、席に座ったら大谷のホームランだった。口が開く感じがして、ひとつめの動画を撮ったのはそれよりあとだったと思う。ホームランてなんか文脈を無視したパワーがあってすごいな、と二本目を見た時にも思った。大谷は大きな背中で7回の途中までマウンドにいて、自分で守って自分で打って大活躍をしていた。チームの調子も比較的良さそうで、前夜に見たエンジェルスは高めのボール球もシンカーも全部振って抑えられてたのに、ちゃんと四球をえらんだりしていていったいこの数日の間に何があったんだろうと思った。終盤逆転のランナーが出てヒヤヒヤしたりもしたけど、応援しに来た甲斐があったのか最終的には4-2で勝利していい気分だった。この日はJapanese Heritage Night というので、合間合間に100歳の日系人のおじいさんやおばあさんが紹介されていてありがたい気持ちになった。他にも小さな子供が走ってごほうびをもらうコーナーがあったり、パックマンのレースがあったり、野球場ってあんなに和やかな場所だったかな。そういえば滞在中初めて友人以外から自然な日本語を聞いたのがここのteam storeだった。応援しにくる人が多いのかもしれない。店内には殆ど大谷選手とトラウト選手のグッズしかなくて、大谷選手が大人気でいてくれて助かったなと思いながら母親にTシャツを買った。

友人宅に戻ってからビーフ味の日清カップヌードルを食べてみたのだけど、出汁がコンソメというか、カツオとか醤油の味があまりしない、不思議なスープだった。