Santa Monica, the Getty Center & the Pantages Theatre

今日はお目当ての美術館に行く途中にあるビーチに寄ってご飯を食べましょう、と連れが言って、着いたビーチはとても賑わっていた。常設の海の家みたいなレストランがいくつもあって、小さくてカラフルな観覧車がすごい勢いで回っていた。空は青くけぶっていた。日本でもあんなふうに海と空が青く霞んだりするんだろうか。あまり海辺に詳しくないからよくわからない。

昼食の間に美術館の観覧には時間ごとの予約が必要なことに気がついて、不安定なシステムに翻弄されていたら友人が通話をかけてなんとかしてくれた。そもそも友人は美術館にあまり興味がないのかと思っていたのに、スッと諦めて火曜昼間にリスケしようとしていた私と違って、ちゃんと交渉してその日のうちに見られるようにしてくれて尊敬した。

桟橋を歩いて駐車場に戻るとき、屋台か何かのスピーカーからアリシア・キーズのIf I Ain't Got You が流れて、鼻歌を歌ってたら同時に結構な熱唱を被せてきた人がいて笑った。Some people want it all !! But I don't want nothing at all !!

美術館は専用のトラムで丘を登った上にあって、英語を話す人の少なさもあってちょっと俗世を離れた感のある場所だった。この美術館を作ったのはJean Paul Gettyで、でも本人が亡くなる2年前の完成だったせいで彼自身は美術館に来られずに亡くなったのだそうだ。身代金は値切っても美術館はケチらなかったんだなと見直した。時間があまりなかったので駆け足でイタリアの宗教画やら何やらを見て、印象派の部屋と彫刻を少し見るので精一杯だった。ミュージアムショップのグッズが多かったのはゴッホのアイリスだけれど、私が好きだったのはブリューゲル父のブーケだった。

https://phoebusfoundation.org/en/agenda/brueghel-goes-los-angeles/

あとは結構晩年に近いモネの睡蓮(わたしは幼い頃に見た睡蓮ばかりの展示の影響で、晩年の睡蓮をぼーっと眺めるのがかなり好きだ)が見られたり、ムンクが繊細でよかったりしたし、イタリアの陶器やガラスのコレクションも侮れないと思う。でも一番よかったのはとびきり明るい昼間に見たヘンリー・ムーアの彫刻で、いつか作家の故郷であるイギリスに行ったとしても、こんなふうに生き生きと翳りなく見ることはないだろう。機嫌が良くて力持ちで柔らかい。

庭園ではバラやブーゲンビリアが咲いていて、楽園のようだった。カンナも見た。10月の沖縄で見たオレンジのカンナを思い出して、この花を見るとなぜ安心するんだろうと思った。カフェで美味しい飲み物を飲んで、よく整えられた庭でのんびりできたらさぞいい気持ちだろうと思う。

忙しい観光客たる私にはそんな暇はなかったので、ハリウッドに出てティナ・ターナーのミュージカルを見た。6月前半に聞いていたCNNのポッドキャストで、亡くなった彼女を追悼するコーナーがあり印象に残っていたのだけど、LAで何かいい演目はないかなと探していたらまさにそのアーティストの伝記物が上演されていた。スケジュール管理ができなくて最初の30分弱を見逃したのに、全然気にならないくらい演者の力が凄くて引き込まれた。カーテンコールでも2曲パフォーマンスしてくれて景気のいい気持ちになったので、次に落ち込んだ時にはティナ・ターナーを聞こうと思う。そういえばめちゃめちゃにデフォルメされたフィル・スペクターが出てきた(実際見たことある彼の映像とかまんまなのでデフォルメっていうかよく似ていた)のだけど、やっぱり殺人とかして収監された挙句に亡くなっていると遺族からも文句が来ないからやりたい放題なのかな、思い出しただけでちょっと面白い。the Hollywood Pantages Theatreは1930年からある古い劇場で、アカデミー賞の授賞式も行われていたことがあるのだそう。とてもいい雰囲気だったし、この日が一番装いのいい観光客を見た。

デニーズに寄ったのは多分この夜だった。随分遅いのにブラックコーヒーを頼む妙な客だったけど、ちゃんとおかわりもすすめてくれて、本場のデニーズも悪くないなと思った。