後藤比奈夫句集 祇園守

 

 

古本屋で買って、通読する性質のものかはかりかねて時々パラパラしていたのを、読めない漢字なんかを調べながら少ししっかりめに目を通した。

もともと花の写真を沢山撮っていた時期に、キャプションとしてその花の句をあちこちから借りてきていたのだけど、そうしているうちに何人かお気に入りの俳人ができて、後藤比奈夫はそのうちの一人だ。

大阪大学を出て、軍の研究所で働いたあと会社を二つ起こして、俳人としても活躍しながら2020年まで存命だった。ちょっと考えられないくらい有能な人だったのだと思う。私が好きになる人は短命率が高いので、この人は長生きで作品が沢山ありそうでよかった。

でもこんなふうに世界を見てそんなに長生きして、さぞ面白くて大変だっただろうな。

牡丹雪とははっきりと地にとどく

選びきれないので鮮烈だったのをひとつだけ挙げておく。高々第三句集一冊読んだだけで、何かを見ては後藤比奈夫はどう詠んでいたっけ、と検索してしまいそうな気分になって、我ながら危うい。(そんなのはほとんど恋の行いだから。)