イスラム2.0

 

少し前にSDGsの17のゴールを見ながら選んだ本、どれに対応しているのかは忘れたけど。
一般のイスラム教徒がWebでコーランや啓示を検索できるようになり、YouTubeで説教を聞くようになった後のイスラム教のことをイスラム2.0と定義し、イスラム2.0における各国の状況や取り組みについて紹介している本。最後の章では、日本でイスラム教徒と共生しようとする際の具体的なアドバイスも書いてある。

実際のところはわからないな、と思う部分もあったが、私がイスラム教やイスラム法イスラム国家についてあらかじめ知っていることが少なすぎて、単に役に立った。

答えのなさ、という意味では本当に開かれた本で、この本の中には、先に並べられたイスラムに関する事実を受けて、これからはどのようにイスラムと付き合えばよいのか、どのようにすれば異教徒たる私たちは不幸にならずに済むのか、人権は守られるのか、経済活動は守られるのか、ということについては書かれていない。
(私は、一人にできることは限られているし、誰にもどうすることもできない部分もかなり大きそうだという感触を持った。)

音楽と偶像崇拝が禁じられるイスラム教に私が改宗することや、同性愛に量刑を定めるイスラム法治の国に私が住むことはないけど、私の住む街にもイスラム教徒は沢山いる。そういう人たちと、当たり障りなく、かつ長期の相互的な悪影響を生じさせることなく暮らしていくには、理解と諦めが肝心なのだろうと思った。宗教に限らない多くの社会的な関係もそうだけれども。

文章があまりに歯切れが良すぎて笑ってしまったところがいくつかあって、文脈は書かないけど一箇所引いておく。

暴力的ジハードは啓典に立脚したイスラム教の正当な教義ですが、世界征服を目指して異教徒と戦い続けるという教義は、近代社会のあらゆるルールに違反しています。

特に後半がよくて、本当にその通りであることを指摘してるだけなのに、内容が強烈すぎて面食らってしまった。何らかの宗教の教義が、別に最初からそれを目的として定められたわけではないのに、”近代社会のあらゆるルールに違反して”しまうなんてことがあるんだ...と一旦は思って、でもイスラム教の場合は啓典をなるべく文字通りに受け取る、という伝統があるからそれが鮮やかなだけで、各種宗教の聖典を文字通りに理解したら、近代社会とは相容れないものの方が多いんだろうな...という感慨になった。


宗教のことはもっと知りたい。世界を構成するとても大きなファクターだと思う。