世界の果て

 

世界の果て (文春文庫)

世界の果て (文春文庫)

 

表題作は、広義には犬の話で、でもまあわたしの愛する犬という種類の生き物の話ではない。

 

"自分が新しく生活を始めれば、その周囲に、何かが溜まっていくんです"

 

そう話す人が出てくる。完全な自由なり、完全な闇なり、突き抜けた向こう側の周りを各登場人物が彷徨くのだけど、いかにも暗い小説で気が滅入る。滅入ってるのが普通の人になれるので結果的には暮らしやすくなるともいう。世界から距離を取らせてくれる、優しい作家だなと思う。