されど私の可愛い檸檬

 

中編が3つ、どれも面白い。

私にとっては最初に収められている「トロフィーワイフ」がひどかった。器用で卒のない姉・棚子と、その姉から距離をとって暮らす妹・扉子の話。

姉が夫のある発言を理由に夫と暮らす家から家出して、友人の家に転がり込むところから始まる。最終的にその発言に対する妻の理解が間違っていた、みたいに妹に口出しされて棚子が家に帰ることになる。

この書き振りからもわかるように私は最後まで姉・棚子の味方だった。夫が私のことを、この世に二人といない、特別で素晴らしい運命の人であり、彼女を失うなんて考えられない、と思わないなら、思っているように見せかけることもできないなら、少なくとも関係性を継続する意味はない。

私は私の幸せと不幸せがかけがえのないものだと知っているし、それは他の誰かや何かによってはもたらされないものなので、まるでそれに別の可能性があるかのような、私が他のものによって幸せになる可能性があったかのような言説には全く共感できない。あの夫が自分が何を言ってしまったかを理解しないなら永遠に私の前に姿を現さなくていいと思うし、妹にいたっては出てくる必要がないと感じた。棚子もそんなこともわからなかった夫とこの先もずっと一緒にいることはできないんじゃないかなと思う。

小説の内容全拒否で泣いたらスッキリした。通り魔に襲われに行くみたいな読書になってしまったけど、読まないよりは読んだほうがいい、他2作も同様にえぐい。