ムーミン谷の彗星

 

 

ムーミン谷に彗星が向かってくる中、ムーミンとスニフが大冒険をする話。スノークのおじょうさんと出会うお話でもある。ほんとうは貨幣と交換のことについてもいいところがあるんだけど、ラブストーリーのところを二つ引いておわりにする。

「略)…それからスープをつくるお水。それから、テーブルにかざる花も。」

「なに色の花?」

と、ムーミントロールがききました。

スノークのおじょうさんは、自分のからだを見ました。いまもやはり黄色でした。

「むらさき色のを。むらさき色の花が、わたしにいちばんよくにあうと思うの。」

ムーミントロールは森へむかってかけだしました。

食卓に飾る花の色を聞かれて自分の肌色を見るおじょうさん、1946年とは思えぬMy Body My Choiceな世界観で最高だし、それを聞くや否や森へかけだすムーミントロールも、ほんとうに一生懸命ないいムーミントロールだと思う。

 

「きみは、ぼくの命をたすけてくれたよ。とってもかしこい方法で。」

と、ムーミントロールは、スノークのおじょうさんにいいました。

「あれは、もののはずみよ。でも、あんたを大ダコから、毎日でもたすけてあげたいわ。」

「いやだよ、そんなの。きみは、欲がふかすぎるよ。おいでよ。ここから出よう。」

 

こちらは大ダコを手鏡でやっつけたスノークのおじょうさんと、助けられたムーミントロールの会話なんだけど、うっとりしてしまった。マジで毎日でもたすけてあげたい。欲がふかすぎる側なので、欲がふかすぎるよ、って指摘されたい。

相手が自分の欲深さをわかっててくれるのはほんとうにいいことじゃない?意味内容としては同じことを、何回か言われたことがある気がしていて、そのたび幸と不幸の混淆する、言いようのない気持ちになる。溢れる分の愛は他の誰宛でもないから、手離して見送るしかない。そのピリッとするような微かな痛みと、でもそれは今の今まであなた用に取ってあったんですよ、と言ってあげられた誇らしさ、ちゃんと足りて余ったんだなと思う弾んだ気持ち。