私のTemporary vol.1

CRCK/LCKS『Temporary』聴いて書いた感想、4,000字くらいあって一息よりは少し長いので興味のある曲だけとか、ご自由にご笑覧ください。各曲のタイトル、英語への訳し方が素敵だなと思うものがいくつかあって両方書いておきました。

 

1.introduction/introduction

前作Double Rift (CRCK/LCKS 『Double Rift』 - 音の鳴る日も。)のintroductionを聞き返した上で当たり前のことを言うんですけど、SMAPよろしくちゃんとアルバムの雰囲気を表す音色になっていた。今回はマイクが入った瞬間がはっきりわかるような、今ここからは遠く遠く隔たった場所で録られたテープのようなザラザラした音、KISSのフレーズだけど嘘降る夜以降のイメージを纏っていてキラキラと星が瞬く美しい夜空だ。

2.KISS/KISS

作詞作曲:小田朋美

半端丈イントロに慣れ切っている観客への信頼を感じる。でもこの4・4・2のフレーズを歌前は4・4で切ってあるのが間延びしないポイントなのかも、格好いい。

この曲の間奏まず「ほら」で景色見せてくれる入りからyayなんですけどハイパー銘くんタイムもあるしサビ入る前石若駿だけになる小節もあるし鍵盤ピアノだし間奏明けサビワンコーラスしたあとのヴォコーダーの入り方はGoodbye Girl 以来のお家芸に聞こえるし演奏聴くの一番楽しみかもしれない、わりとやりたい放題じゃなかったですか?>リリパ勢

そうでもなかったらごめん、でもね私最初にクラクラの赤いEP聞いた時「私多分ギターの人のファンだと思う」てかなり職人気質の天才を想像して言ったんですけど、この曲における井上銘のぬかりない仕事ぶりのことが相変わらず好きです。ソロもその他も。実際のところその第一印象ののちに知った彼の活動はとてもクリエイティブだったしリーダーバンドもやってたわけで職人という形容は当たらないのかもしれないけど、井上銘はやっぱりかっこよかったよね、て思う。私が知った時点でほぼほぼ全世界が知ってたけど。BPM100ちょっと超えるくらいで一番大好きのゾーンだから聴いてて最高の気持ちになる。

3.嘘降る夜/A lie falls into the night

作詞作曲:小田朋美

ギターとベースが最初ユニゾンなのが好き、そのあとどんどん自由に解れていくのが好き、ライブでは駿くんがバカになるタイムになりそうなのも好きら。きちんと終わるのがいいSo we have to なんちゃらかんちゃら is over.文字が1文字ずつ降ってくるVJが見える、ダサいからやめとこ

4.Searchlight/Searchlight

作詞:小田朋美 作曲:小西遼、小田朋美

相変わらずスローにたゆたってゆく心地よいフレーズでいい曲だ…。でもシングルと聞き比べるとこっちのバージョンのがより気持ちよくてすきです。ベースのアタックとか音のコアが太く安定して聴こえてシャンとしたところが増えたように思う。どんな魔法をかけたのか教えてほしい気持ちと聞いてもわからない自信がせめぎ合う。

イントロのオルガンの雰囲気がちゃんと2番のサビあと(2:20すぎ)のところに響く美しい構成なんだな、と今気づいた。終盤に入ってるフルートの音とても好きだけどライブでも入るかな。

5.ひかるまち/Glittering Town

作詞:小田朋美 作曲:越智俊介

配信されて一聴このアルバムで一等好きだ、と思ったのはこの曲だった。これはCRCK/LCKSの新しい一面だし、この曲がこのアルバムのカラーになると思った。もちろんこれはくるりが好きすぎて歌詞に散らばる "この街" とか "旅に出かけようぜ" などの語彙やカッコいいベースラインからにわかにくるりみを嗅ぎ取ってくんかくんかしてしまう浅薄なバンギャの直観ではあるんだけど、「私はコレにお金を払う」旨スッと心が決まったので、この曲にはまがいものじゃないパワーがあるんだと思う。まぁ私の強い気持ち、強い愛とは別にこの曲はね日本語ポップスとクラクラががっぷり四つに組んでいる、驚くべきベーシックポップチューンなんですよね。2番のサビまで構成聴いてってこのあと間奏Cメロサビだったらどうしよう照れちゃうって思ったんだけどそのままサビ' みたいのだった、よかった。それを言ったらBPMは100を切るミドルテンポだし何がベーシックなのかというのは難しい問題ですけどでもこのシンプルな編成・構成・妙な転調なし・手数抑えめ・全部4拍子・2番のAメロあたまベースとドラムがいなくなるPOPS仕草、堪能して欲しい。一見シンプルな料理にこそ個性が出るんですよ、これを堂々とやってのけるようになったCRCK/LCKSのこと見て欲しいの(さっきからお前は誰なんだ)。私はくるりが好きだからくるりの話をしたけど、槇原敬之が好きなら槇原敬之に、ユーミンならユーミンに引きつけて聴けちゃうくらいの、そういう懐の深さをここで、越智俊介と小田朋美が聞かせてくれるわけじゃないですか、やば

でもこれ絶対ライブで聴いたらこれの何倍かアツくなってしまうやつだとおもう、この「ギリ平熱ですけど?」みたいなテンションで聴けるのは盤だけって知ってる。ちょいちょい生の金管で聴きたいとこある、ツアファイにスペシャルホーン(ズ)コラボ来ないかな…!

6.La la la-Birdsong/La la la-Birdsong

作詞作曲:小西遼

"揺れ" が入ってるかと思ったら "夢" だった、嘘降る夜に呼応する歌詞だ。

でもそう、インターネットじゃない場所と、インターネットじゃない歌のことを大事にしなくちゃだ、いつでも。私はそれをインターネットに書くけど。

7.春うらら/Spring shines

作詞:小田朋美

作曲:石若駿

この曲もね!5.ひかるまちと並んで新味が溢れると思ったら普通に作曲が石若駿さんでした、作家性侮れない。このアルバムのこの位置に配置するために書きおろしたのかと思うような、全体のよいアクセントになっている少し変わった構成の曲。"鳥のように自由にと" M6の小西遼さんが書いた歌詞とどちらが先に生まれたのかな。

"緑を揺らすあおい風だけが

ぼくらを 繋いでいた"

という歌詞、4で取るなら "あおい" のところで2を数え直す感じにすると収まりがいいかなって拍子なんだけど(4/4/4+2/4/4/4/4)その2がひらがなで、青いでも蒼いでも碧いでもない。私はそこにはひらがなの "あおい" がよく似合っていて、それ以外考えられないと思うんですよね。

???「オダトモミさんが最高にかわいい案件でほっとけないじゃないスか〜🥖」

8.ながいよる/Night out

これもあたまから3-4-2/3-4-2/3-4-2/3-4-4みたいなかたまりになっててまぁ実際の記譜はともかくとしてKISS・Searchlightと並び立つ良イントロですよね。高橋あずみさんの原曲通ってなくて、パパパパで聴いたときえっR&Bでわりと聞く風の進行…からのウワアァァア転調しそうなとこでふつうに半音上げしたァァァ…!てめっちゃ楽しかったのを覚えてます。最後の"ながいよるを越えて"はちゃんとE♭からG♭を通って上がって "てえええ" の音がC(Ⅵ)なんですが和声がなんか上手いことなってて(解説が要る)とにかくめちゃめちゃ気持ちいいですよね、以降だいたいE♭上の雰囲気Cmで飲めや歌えや丸サプランだと思うんですけど、これをこそ大団円と言います、という感じで最高です。英詞が入るの含め握手したい世代感で壮大なラブ

9.demo #01/demo #01

vol.2に demo #02 が…?そんなことはないのかな。歌詞カードに何も載ってなくて正式には作者もわからないです。オダトモミさんかなと思ってる。F.I.でやってきてF.Oで終わるので一曲でリピートすると寄せては返す波みたいになる。メンヘラなうorメンヘラあがりの落ち着きたいひとにオススメです。

 "サヨナラしたっていいのよ どうせ忘れないからね"

(表記は筆者による、全てひらがなも魅力的だなと思う)

毎日毎日脳から零れ落ちてくディテイルを拾い集めてはそれでも忘れること、自分が何を記憶に留めようとしているのか段々わからなくなることに気付きながら、特にどうすることもできずにいる人間からすると本当に羨ましい。忘れないでいられた試しがない、来世まで憶えていたいと思うのに。でもそう、さよならしたからって損なわれない価値はあると思います。そのことを私はいつか忘れてしまうけど。もしも私の神様は私の中にしかいないのだとしても、神様というのは往々にして忘れっぽくて、たぶんこの私も例外ではないのだろうと思う。憶えておく、というのは人間のような限りあるもののやりたがることだという気がする。

10.病室でハミング/Byoshitsu de Humming

聞きたかったのだけどCDプレイヤー壊れてた、彼女が最後に役に立ったのはAINOUのマイナス再生したときでしたね😊ちょっとお部屋のオーディオ環境整えるまでお預けです。欄だけ作っといた。

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全体をふたつに分けたことが一枚ごとのまとまりに好影響であったのか、椎名林檎のアルバムかな?と思うような曲想、歌詞、タイトルの繋がりの良さで最高だったな。小西遼さんが敬愛する椎名林檎さんについて滔々と語っている様子がふと脳裏をよぎりはしましたが実際たぶんそのせいではなくて、このアルバムで伝えたい、やりたいことを考え抜いたら自然とそれぐらい整えて届けたくなるってことなのかもなと思いました。ここじゃないどこかへ出かける、抜け出す、フィルタ/レイヤーを変えるような曲が多くて、クラクラはあんまり何かにまっすぐ立ち向かったりしなくて優しいなと思う。言いたいことが剥き出しじゃないってことが("どのように"回り道をするかということが)表現のためには大切で、その点において優れているおかげで、ある種holyな、護られた音楽として響いている。いい音楽をありがとう、vol.2のジャケットがどんな風に対になるのか、一枚がKISSなら一枚はHUGかな、白と黒が反転するのかな、楽しみなことが音楽以外にもあって、今からサンタが来ることが決まっているよい年になった。個人的にDouble Riftの自分のレビューにPV勝ちたい下心があっていっぱい書いちゃった、読んでくれた人がいたらありがとうございました。