薄情

 

薄情 (河出文庫)

薄情 (河出文庫)

 

 

今日はこれだった。文句の言いようがないような読み物で、解説を堀江敏幸が書いていた、贅沢な顔触れの本だ。私はたまたま長野の、土地の者でない人たちの集まりを小さい頃から知っているし、「紙の温度」も、名古屋ドームのイオンも知っている。慣れ親しんだ疎外と、穏やかな毒、薄情。安らいだ気持ちで読んだ。三人称をこうやって使えるものだろうかね、と眼の前で行われているあまりにも柔らかな内省への着地にときどき意識して首をひねった。これは日本語が好きな大抵の大人に薦められる。全くピンとこないシティガールズ&ボーイズもいるかもしれないけれど。